幹事長インタビュー

Q1. 天野幹事長の生い立ちをお聞かせください。
大阪府堺市、大阪刑務所の側で幼少期を過ごしました。誰がどう見ても「変な子」だった私は、環境も相俟って思いっきりいじめられました。世間は厳しいですね。親の転勤で大阪市内に引っ越してもいじめられたので私に問題があったのだと思います。それでも、何人か本当に大事な友達もできて、誠意は伝わるのだというのも知りました。小学生の頃から映画や小説といった「物語」が好きで、いつかそれを作る仕事に携わりたいと思っていました。
その後、大阪桐蔭中学校・高等学校に進みます。中学時代は先生や友人に恵まれ、小説を書いたり、友人と映画を作ったり、あるいはディベートに興じてジャッジと喧嘩したりしていましたが、高校では学校との軋轢や自分自身の迷いもあって不登校になり、結局3年に上がる直前に退学しました。その後二浪し、早稲田大学に入学して現在に至ります。

Q2. 雄弁会に入った理由と雄弁会の良さについて教えてください。
まず雄弁会に入るにあたって最も影響が大きかったのは、やはりディベートをやっていた頃の満足感と不満感です。当時から政治に興味はありましたし、議論するのも好きでしたから、やはり頭の良い人たちと喧々諤々やり合うことには、言いしれぬ満足感と高揚感がありました。反面、ディベートという競技のルールや単なる論理ゲームの不毛さに対する不満感は抑えられず、顧問やジャッジとは常に争い続けていました。
政治系のサークルには必ず入ろうと思っていましたが、始めに雄弁会の会室を訪ねた時、ここならそういう不満に答えを与えてくれるかもしれない、と思いました。特に明確な理由があるわけではないのですが、それでもそんな魅力ある人たちと出会えたことは確かです。これがそのまま、雄弁会の良さにも繋がります。雄弁会には、本当に頭の良い人たちがいます。何より、「議論」という言葉がこんなに気軽に使える空間はない。相互批判こそ成長の糧。それを実感しました。

Q3. どのような雄弁会にしたいか、意気込みとあわせて教えてください。
少し前、こう訊いてきた人がいました。
「雄弁会に入ったら雄弁になれますか?」
私は一瞬、答えに詰まりました。自分こそ雄弁家だ、なんてとても言えなかったからです。
「雄弁とは何か」。難しい問いです。多分、どれだけ議論を繰り返したところで答えの出るものではないでしょう。我々は日々、社会問題の研究や、政策提言の弁論を行っていますが、それを通して「雄弁」になれたか、と言われると、自分では何とも言いがたいものがあります。
それでも私は今、自分が素晴らしい「雄弁家」たちに囲まれていると確信しています。燻っていた不満をぶち壊して自分を変えてくれた先輩や、力を与えてくれた同期、その全員が、私にとっては他の誰よりも尊敬すべき雄弁家たちです。
でも、そんな彼らとて、全員が全員、自分の力を社会で前面に発揮できるとは限らない。社会は我々に、あまり「面白いこと」や「役に立つこと」を、そうと実感する形で与えてはくれません。そんな中でも、彼らに力を発揮してほしい。そのために雄弁会に出来ることは、力を発揮するための基盤を作っていく手伝いです。大学生で余裕のある今だからこそ、地に足を着けて、じっくり自分のやりたいことが出来る場所、今後社会に出て行く自分の「軸」を涵養できる場所。全員が社会に対する「表現者」となれるような、そんな場所が必要なのだと思います。
だから、冒頭の問いに私はこう答えました。
「一緒に雄弁になっていくサークルです」
月並みですが、私の思い描く雄弁会とは、そんな場所です。

Q4. それでは、最後に一言お願いします。
先週、新歓で忙しい合間を縫って同期と映画『ラ・ラ・ランド』を観に行きました。「あり得たはずの自分」と「なれなかった自分」を比べながら生きているのが人間というものだけれど、それでも最後には「これが自分の人生なんだ」と開き直って生きていけばいい、一度きりの人生なんだから。受け取り方は人それぞれですが、私はそんなメッセージを感じました。
その時ふと思いました。私は去年の今頃、雄弁会の幹事長になるなんて全く思っていなかった。友達にも「何で? そこまで楽しいの?」とよく訊かれるし、自分でも去年一年間で散々自問し続けたことです。でも、ここで私は、一つの「物語」を紡いでいます。「雄弁会での天野眞之」という物語です。そして多分、会員の数だけ物語があるはずです。幹事長の私には、各々の物語を集めて、「雄弁会」という115年続いた物語をもっともっと面白いものにしていく義務があります。
我々のサークルには、後から見れば一つの物語になるような、そんな劇的な経験に溢れています。そんなところから「表現者」は生まれ、人の心を動かし、「雄弁家」になるのかもしれない。そしてそのプロセスは、きっと充実したものであるはずです。新入生の皆さんと、是非一緒にそれを追いかけていきたい。そう思います。

以上です。ありがとうございました。

(文責:原)

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